☆研究グループ
「遺伝情報研究グループ」解散に際して
遺伝情報研究グループは1992年に大阪大学の大学共同利用施設として遺伝情報実験施設が設置された時に、私、三輪岳志が助教授として赴任し開設しました。1995年に微生物病研究所附属病院棟跡を改修した旧南館2階に研究室が設置されました。2001年に遺伝情報実験センターに改名し、2005年には微生物病研究所附属のセンターになり、2007年には大学自体が法人化されるなど名称は何度か変更されました。 2011年には旧南館が解体され、2013年8月に同じ位置に最先端感染症研究棟の改築が完成して、3階に研究室は引っ越しました。
遺伝情報研究グループの研究としては、ヒトアクチン遺伝子群を中心に心筋や平滑筋における組織特異的遺伝子発現機構を解析するとともに、医学部循環器内科や腎臓内科と共同で遺伝子変異マウスやラットを用いた病態の分子生物学的解析を行ってきました。
遺伝情報研究グループが中心のセンター全体の学内サポートとして当初のDNA合成やシークエンス解析などに加えて、遺伝子改変マウスの作製飼育援助やRI施設の管理などを行っていました。 また、遺伝情報実験施設の設立趣旨の一つである「学内の遺伝子組換え実験の発展と安全管理」のために1993年から大阪大学遺伝子組換え実験安全委員会のメンバーとして、 「全国大学等遺伝子研究支援施設連絡協議会」などを通じて文科省や各大学の遺伝子組換え関係の現状を学内に伝えることや遺伝子組換えに関する学内向けホームページ整備などを行ってきました。
全国的な活動としては2013年から基礎生物学研究所の大学連携バイオバックアッププロジェクト(Interuniversity Bio-Backup Project for Basic Biology; IBBP)のサテライト拠点として研究者の実験途上の生物遺伝子資源のバックアップをサポートすることも行っています。
私、三輪岳志は2005年から半期16回の全学教育推進機構の授業「生物科学概論A」、2019年から「生物学序論」、を16年間担当し、受講学生が多い年には160名を超える授業を行ってきました。その他、医学部の「機器分析セミナー」や微生物病研究所主催の「病気のバイオサイエンス」などの授業も長年担当していました。
2021年3月で私が大阪大学を退職することに伴い、遺伝情報研究グループは解散することになりました。私個人としては1978年に大学院で大阪大学に入学して、途中数年東京大学やスタンフォード大学にいましたが、残りの約37年大阪大学にお世話になります。ホームページからではありますが、関係者の皆さんに心からお礼を申します。本当に長い間ありがとうございました。
2021年3月
三輪岳志
准教授; 三輪 岳志 (研究者総覧)
☆研究内容
循環器系で特異的に発現している疾患に関与する遺伝子について遺伝子組換え動物を含めたモデル動物を利用して分子生物学的解析を行っている。特に、心不全の約半数を占める心左室の拡張不全の病態解明と発症メカニズムの解析を進めるとともに、血管特異的に発現する遺伝子の発現調節機構の解明を行っている。
1) 食塩感受性高血圧ダールラットを用いて拡張不全の典型的病態モデルケースを作製したその解析から高血圧患者で増加する血清内因性ジギタリス様物質のNa+/Ca2+ exchanger に対する影響や食塩感受性因子としてカルニチンが心左室線維化の抑制による左室拡張機能の改善により拡張不全の発症が抑制された。また、拡張不全の患者やモデルラットではIL-16の血中濃度が上昇しており、心臓特異的にIL-16を発現させると心左室における線維化と硬化度の上昇がみられ(図1)、IL-16が拡張不全に大いに影響していることを見出した。
図1 alpha-MHCプロモーター下でIL-16を心臓特異的に強発現させたトランスジェニックマウス(TG)における心臓の肥大化(左図)と心左室における線維化の亢進(右図)を示す。
2) 血管平滑筋細胞における組織特異的遺伝子発現調節機構の解析をヒト血管平滑筋alpha-アクチン(SmaA)に関して行い、特異性を重要な作用する領域を同定するとともに(図2)、急性炎症時に一過的に強発現し、病態悪化との相関性がある遺伝子マーカーのSmaA の発現機構とその病変での発現の意義を解析している。
図2 血管平滑筋alpha-アクチン遺伝子プロモーターに塩基変異を持つもの(中央と右)は正常(左)に対してマウス胎児で大動脈(Ao)での発現のみが阻害されるので、これらの塩基の両配列が血管組織特異的遺伝子発現に必須である。
☆研究論文リスト
一覧へ☆グループメンバー
准教授 三輪 岳志; miwa(@;アット)gen-info.osaka-u.ac.jp
事務補佐員 冨岡 周
技術補佐員 富岡 麗